第3回 光科学技術の分類

2017.04.24

第1回の質問の解答が「否」から「可」に代わった革新的な変革の理由はオンシェルの光子ではなくオフシェルの光子を使いこなすことにある。表3.1に使用する光と物質の組合せによって区別されるいくつかの光科学技術を示そう。オンシェルの光を使う技術は、これまでに発展してきた光技術に他ならない。オンシェルの光をナノ物質と組み合わせた光技術も最近になって開発されているが、これらはDPを使った技術とは異なるので、第1回の質問に対し、依然として「否」という解答しか与えない。
表3.1 各種の光と物質との相互作用を利用した科学技術の分類

オフシェルの光(DP) オンシェルの光
ナノ寸法の物質 ドレスト光子の科学技術プラズモニクス、メタマテリアル、フォトニック結晶
巨視的寸法の物質 —————————— 既存のフォトニクス

DPの関わる科学技術と従来の伝搬する光の関わる現象・技術との違いを見分ける一つの方法は分散関係に基づいた議論がなされているか否かである。すなわち、DPはオフシェルの光なので第2回で述べた性質(1)によれば波数(運動量)は不確定であり保存されない。つまり波数(運動量)を独立変数とし、それに対するエネルギーの値の依存性(これは分散関係と呼ばれている)を議論することができない。それに伴い、光に対する物質の応答の位相遅れを表す屈折率も基本的な物理量にはなりえない。他方、伝搬光はオンシェルの光なので、波数(運動量)は精度よく決まり保存される。従って伝搬光が関わる現象・技術では波数、運動量、分散関係、屈折率を使うことができる。光の波長以下の小さな寸法の物質を使った最近の技術としてプラズモニクス、メタマテリアル、フォトニック結晶等があるが、これらは第2回の図2.1の実線で表される分散関係を用いて議論されており、伝搬光が関わった技術であることから、DPの関わる科学技術とは無縁であることは言うまでもない。


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